夜色、線香花火
「ここら辺にする?」
砂浜にしゃがみこむ。聞いておきながらも、移動する気はないというやつだ。
砂浜に降りる階段からはちょっと離れた、ちょうどいいところかなって。
「いんじゃね?」
よし、おっけー。準備をしよう、と思ったら。
「あー……立ち上がんなきゃ」
水、汲もう。なんでしゃがんだのよ、あたしがバケツ持ってるのに。
「おれが行く」
あたしの手からバケツを奪って、水面へと歩く。歩幅、大きい。さっきまでは、やっぱり、合わせてくれていたんだよなぁ。
ていうか、あたし、 立ち上がりたくないから行ってこい って催促した?うわごめん、慎太郎。