夜色、線香花火


「ん」


ずいと目の前に出される、バケツ。受け取って砂の上に置く。


「ごめん、ありがとう」

「結実が行ったら、波に攫われそうだから」

「……あ……靴、濡れたよね。ごめん」


花火セットに手をかけ、袋の粘着部分を外そうとしていた彼が。


腰を曲げて、バケツに手を突っ込む。


「ばぁあか」


慎太郎の指先から放たれる、水滴。


「ん!」


反射で目を閉じる。


鼻先、頬、くちびる、まぶた。


ところどころで跳ねた。


謝んなよ、ってこと?

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