あの夏の隣で、ただ
ドタドタドタドタ……
廊下を歩いていると、突然後ろから近づいてくる数人の足音に、僕は嫌な予感を覚える。
────また、来たのか。
そう思いながら、ぐっと歯を食いしばる。
「おーい、地味メガネじゃねーかよ。ひっさしぶりだな〜」
やっぱり。この声は────
振り返ると、そこには僕と同じ小学校から来た、隣のA組のサッカー部の男子3人組。
「さすがは地味メガネ君、俺ら運動部の仲間になったらしっかり足手まといになることは理解できてるようだね〜」
「地味メガネが部活なんて似合わねーこと始めたら、またからかってやろうと思ってたのによぉ、まさか帰宅部とはな!」
「ま、ヒョロヒョロしてるお前は何を選んでも、所詮俺らには勝てないってことさ!」
「アッハハハ!!」
────そんな心無い言葉を、次々に僕に投げかけてくる。
僕は昔から、この3人に何度も何度もいじめられてきた。
事あるごとに「地味メガネ」と呼ばれてはからかわれ、僕が何かしようとすればすぐに馬鹿にされる。
テストで100点を取れば彼らに取り上げられてビリビリに破いて捨てられ。図工で作った作品は目を離した隙に壊され。昔習っていたピアノは「男のくせにピアノなんて気持ち悪い」と言われてやめてしまった。
────そんな日々を、昔から僕は送ってきた。
────僕は中学受験に失敗して、彼らと同じこの学校に来てしまったから、これからもこのいじめは、無くなることはないだろう。
「じゃあな、地味メガネ。俺らはお前と違って、部活で忙しいからよ!」
3人組の一人はそう言うと、追い抜きざまに片手に持っていた通学鞄を、ぶんっ、と振り回し、僕の胸元にドゴッ、とぶつけた。
「……っ………!痛い…………!」
僕はその場で胸を押さえる。
そのまま振り向きもせず、何も言わず去っていく3人組。
「……っ…………ぐっ………………っふ…………」
堪えきれず、涙が出そうになる。
それでも泣き顔だけは誰にも見られたくない。そう思い僕は、近くのトイレに駆け込む。