あの夏の隣で、ただ


洗面台の鏡に映った自分は、地味で、細くて、弱々しくて。


眼鏡を外した自分の顔は、もっと存在感がなくて。


運動は大の苦手で、声だってまだ子供のように高く、か弱いままで。



────僕なんて、とても、あの人達には勝てそうにない。


どうして、僕はこんな自分に生まれてきてしまったんだろう?


────男のくせに、強い所も、誇れることも、何一つなくて。


溢れ出してくる涙を、僕は必死で堪える。



────“男のくせに泣くなんて、気持ち悪ぃ”



小学校の頃、いじめっ子たちに何度も言われた言葉が脳裏を過ぎる。



────泣くな。僕は男だ。あいつらより強くならなきゃいけないんだろ。



もう小学生ではない。泣くことなんて許されない。



そう、自分に言い聞かせる。
< 3 / 9 >

この作品をシェア

pagetop