あの夏の隣で、ただ
洗面台の鏡に映った自分は、地味で、細くて、弱々しくて。
眼鏡を外した自分の顔は、もっと存在感がなくて。
運動は大の苦手で、声だってまだ子供のように高く、か弱いままで。
────僕なんて、とても、あの人達には勝てそうにない。
どうして、僕はこんな自分に生まれてきてしまったんだろう?
────男のくせに、強い所も、誇れることも、何一つなくて。
溢れ出してくる涙を、僕は必死で堪える。
────“男のくせに泣くなんて、気持ち悪ぃ”
小学校の頃、いじめっ子たちに何度も言われた言葉が脳裏を過ぎる。
────泣くな。僕は男だ。あいつらより強くならなきゃいけないんだろ。
もう小学生ではない。泣くことなんて許されない。
そう、自分に言い聞かせる。