あの夏の隣で、ただ
「えっと……その……なんで、ここにいるの?」
女子と話すことなんて全く慣れていない。しかし、このまま黙って帰れるような雰囲気でもないので、恐る恐る言葉を発してみる。
「えー?それは秘密だよー」
すかさず彼女のとぼけた声が、踊り場に反響する。
「そうか……」
僕はそれだけしか返せなかった。
微妙な間合いの僕らの間を、少しの間沈黙が支配する。
だが、やがて彼女は再び口を開いた。
「ねぇ、君って何部なの?」
「僕は…………帰宅部」
答えるのが恥ずかしくて、ぼそりと呟く。
部活も何もしないなんて、格好悪いと思われたのだろうか?
だが、彼女は僕の返事を聞くと、途端に目を輝かせ始めた。
「えっ!?君帰宅部!?本当に!?じゃあさ、ひとつお願いしてもいい?」
彼女は手にしていた漫画本を閉じると、いきなり立ち上がって階段を下り、どんどん僕の方に近づいてくる。
「な、何ですか……」
くりっとした二つの瞳をきらきらと輝かせながら、ドタドタと彼女がやってくる。
「君……吹奏楽部に入らない?」