先生がいてくれるなら①【完】
先生の手が、私の手にそっと触れる。
「そんなに握りしめたら、痛くなるだろ」
先生にそう言われて、膝に乗せていた両手をギュッと強く握りしめていた事に、初めて気がついた。
両手をそっと開くと、真っ赤になって爪の跡がついてしまっている。
先生は「ほらみろ」と言って呆れた表情。
私は自分の膝の上で真っ赤になった両手を広げ、その両手をじっと見つめた。
「──9時」
「……え?」
不意にそう声を掛けられ、私は顔を上げた。
「明日」
──明日って、何の話?
「どうせ俺も光貴に使いっ走りさせられるから、ついでに乗せて帰ってやる」
「……えっ?」
「……お前、頭ちゃんと動いてるか? 明日の病院の話だよ」
「あ、あの……」
そうは言っても、話の内容が突然すぎて頭がついて行かない。
呆けている私を見て先生は大きなため息をついた。