先生がいてくれるなら①【完】
「携帯出して」
「えっ」
「連絡先の交換。何かあった時に連絡先が分からないと困るだろ」
「あっ、は、はい」
い、良いのかな、先生と個人的に連絡先の交換とかして……。
有無を言わせる事無く携帯番号とメッセージアプリのIDを登録する先生。
「登録名、俺の名前にするなよ。バレたらお互いただじゃ済まないから」
「……は、い」
やっぱり個人的にこう言うことするのは良くないんだ。
分かってやってるあたり、先生ってほんと悪い。
登録する名前を何にしようかとしばらく考えて──
【ネロ】
ささやかな私の復讐──。
先生は暴君だから『暴君ネロ』から名前を取ることにした。
思わず吹き出しそうになるのを必死に堪えていると、先生が私の方を見て睨んでいる。
「お前、いま何か悪だくみしてるだろ」
「えっ、しっ、してませんっ」
私は慌ててかぶりを振った。
先生がエスパー並みに勘が良い事を忘れてた……。
「ふーん、まぁいいけど。絶対バレないようにしろよ。予鈴が鳴るから、出るぞ」
「あ、はいっ」
私は急いで立ち上がり、先生と準備室を後にした。
この日から、火・木曜日の病院のお迎えが始まった──。