先生がいてくれるなら①【完】

自分でもよく分からない。


先生に彼女がいなくて嬉しいのか、それとも、何とも思ってないのか。


──あぁ、頭の中がこんがらがってる。


「おい……着いたぞ」

「えっ、あっ、はい」


考え込んでしまってる間に私の家の前まで来ていたらしい。


「いまでも……」

「あ?」

「──その人の事、いまでも好きですか?」


しまった、と思った時にはもう口から零れ出た後だった。


言うつもりの無かった言葉。



「……は?」


「あっ、いえ、なんでもないです!」


慌てて取り消したけど、私の口をついて出た言葉はもう無かった事には出来なくて。



「──お前に話す義務は無いから」



そう言われてしまえば、もうそれ以上追求する事は出来ない。

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