先生がいてくれるなら①【完】
いや、最初から追求する気は無かったんだけど……。
私は慌てて「ごめんなさい」と素直に謝った。
先生のプライベートに踏み込む権利は私には無い。
自分の言った言葉を思い出して私は自己嫌悪に陥る。
私はもう一度小さな声でごめんなさい、と言って車から降りた。
「送っていただいて、ありがとうございました」
頭を下げて車のドアを閉める。
なんとなく先生の顔を見る事が出来なくて、私は小走りで車から離れて玄関扉の前へ急いだ。
家の鍵を開ける間、先生の視線が背中に注がれているような気がして落ち着かない気分になる。
もう振り返る事は出来なくて、私は逃げるように家の中に入った。
扉が完全に閉まって間もなくすると、車の走り去る音が聞こえる。
私は玄関扉の前で、その音が完全に聞こえなくなるまで立ち尽くしていた──。