先生がいてくれるなら①【完】
ひとりポツンと入り口付近に座っているとなんだか背後に気配を感じて、振り返ると解放された部室の扉と廊下の間の壁に背中を預けて藤野先生が立っていた。
──いつからいたんだろう。
この人、時々全く気配が無いからなぁ。
先生の視線がどこにあるのかよく分からないのでこっちを見てるのかどうか怪しいけど、一応軽く会釈だけして、私は再び談笑する部員のみんなに目線を戻した。
「話に入れない?」
ポツリ、と、私にしか聞こえないような小さな声が私の頭上から降って来る。
私は首を横に振って先生の声に答えると、先生は私の隣にやって来てまた壁にもたれかかり、私の表情を伺うように首を傾げた。
私が首を横に振った意味が先生には分からなかったんだと思う。