先生がいてくれるなら①【完】
先生は隣の準備室の扉の向こうに消える。
私もその後を追いかけた。
「扉閉めろよー」
「……はい」
準備室は、完全に先生のプライベート空間。
開け放たれる事を先生は極端に嫌う。
「何をお手伝いすればいいですか?」
座って、と近くの椅子を勧められ、私は素直にそこへ腰を下ろした。
「このプリント、順番にこっちからこう重ねていって、最後ここをホッチキスで閉じて」
「分かりました」
「……」
「何ですか?」
「いや、素直すぎて気味が悪いなと思って」
前髪と眼鏡で顔を隠していても、顔をしかめたのが分かる。
「失礼な。どうせ雑用しか出来ない無能な部員なんで、雑用ぐらいはちゃんとやりますよ。それに私は元から素直でーす」
悔し紛れにそう言うと、先生は「はいはい、素直素直。良い部員だねぇ」と適当な相槌を打って部屋の奥へと消えた。