先生がいてくれるなら①【完】
先生は仕事してるし、私の雑用も終わっちゃってるし、する事も話す事も無く、ただ私がコーヒーを飲む音と時折先生が書類をめくる音やパソコンを操作する音だけが準備室に静かに響く。
私はぼんやりと書棚の本のタイトルを順番に黙読して、英語で書かれた海外の数学書のタイトルに行き着いた所で黙読を諦めた。
先生の横顔を盗み見るけど、こちらに視線を向ける気配はゼロだ。
コーヒーをゆっくりと味わいながら、先生が淹れ方を教えてくれないなら自分で勉強してみようかなと考えていた。
そう言えば一度だけ先生が淹れている所を見た事がある。
どんな風にお湯を注いでいたっけ?
お湯の注ぎ方以外にもきっと何か工夫があるんだろうな。
──と色々考えて、やっぱり先生に直接教えてもらうしか同じように淹れる方法は無いと気付く。