先生がいてくれるなら①【完】
後ろから抱きしめるように支えられているので悠斗の顔はよく見えないけど、言葉と声が明らかな怒りを示していて……。
「はぁ……俺、寿命が百年ぐらい縮まったわ……」
「悠斗……百年も縮まったら、年齢マイナスになっちゃうよ……」
「うるせー。そんぐらいビビったし焦ったって事!」
「うん、ごめん……」
ありがとう、と小さな声で言うと、悠斗はもう一度大きなため息をついて、私をギュッと抱きしめた。
授業と授業の間の十分間の休み時間。
あまり人通りは無いとは言え、数人の生徒が階段を往来する。
その誰もが階段の途中で抱き合っている私たちを見て少し驚き、そして見て見ぬふりをして横を通り過ぎて行く。
「悠斗、チャイム鳴っちゃう……」
悠斗は後ろから抱きしめたまま階段途中の踊り場まで私を移動させて、私から体をそっと離した。