先生がいてくれるなら①【完】
「それ、全部貸して。俺が持って行く」
「大丈夫だよ、ノートだけなら持てるから」
「いいから。ほらっ」
そう言って悠斗は私の手から奪うように取り上げた。
階段を上がり、教室へ向かう途中で授業が始まるチャイムが鳴る。
「悠斗、ごめんね、ありがとう」
「これ全部持つとか、無理に決まってんじゃん。明莉も断れよ」
「違うよ、私が福原先生に持って行きますって言ったの」
「だとしても、この量は無理だろ」
「……うん、ごめん」
悠斗が助けてくれなかったら今頃階段から落ちていて……どうなっていたか分からない。
「悠斗、ほんとに、ありがと」
「おう」
私は自分の軽率さを大いに反省した出来事だった──。