先生がいてくれるなら①【完】
「なんだ、酔ったか?」
色んな事を考えすぎて全く話さなくなってしまったのを不審に思った先生は、私の様子をチラリと伺う。
「……大丈夫です」
「静かすぎて不気味だぞ」
「……そうですか」
「お前、ほんとに気分悪いんだろ。車止めるか?」
「大丈夫です、酔ってません。止めないで下さい。遅くなったら駐車場が混みます」
先生はほんの少しだけ心配そうに私を見たが、そのまま車を走らせた。
ゴールデンウィークの駐車場はものすごく混むことは予想出来た。
今日の出発時間は駐車場が開く少し前に到着するようにと考えられて設定されていたはずだ。
「本当に気分悪くなったら、ちゃんと言えよ」
「はい、言います」
口は悪いけど、先生は優しいところもあるんだよね。
なんて思っていると──
「酔って車の中で吐かれたら、車が汚れる」
──この一言が余計なんだよなぁ。
先生のバカ。