先生がいてくれるなら①【完】

先生は箱から電子レンジを取り出して軽々と持ち上げ、キッチンへと運んだ。


「おーい、立花ー」


キッチンから先生の呼ぶ声がする。


「はい何でしょう?」


覗いてみると、一人暮らしにはあまりにも広すぎるキッチンに電子レンジを設置し終えた先生が立っている。


「なんですか?」

「とりあえず基本操作だけ教えろ」


教えて貰う立場なのに、なぜか偉そうな口調……教えるのやめようかな。


「えーっ、トリセツ見ればいいじゃないですかぁ」


日頃の反撃も兼ねて、ドヤ顔で、そう言ってみる。


「──お前、それ、本気で言ってる?」


先生の顔からスッと表情が無くなって──。


「きゃー! うそです、お教えします! 教えさせて下さいっ!!」


基本的に温めるだけしかしないと言うので、どれを押せば良いのかとか、何に気をつければ良いかをアドバイスしておいた。



結局、買い物の代金の件はずっとはぐらかされ続け、一円も払わせて貰えずに車で強制送還され帰宅したのだった──。



今日は一日、とても疲れた──。


でも、とても……とても楽しかった、です。


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