先生がいてくれるなら①【完】
「へぇ、お世話、ねぇ」
私は、うんうん、と首を縦に振る。
「えっと、ほら、悠斗も、私のお兄ちゃんが入院してるの知ってるでしょう? 病院の先生のね、えっと、お兄さんなの」
苦しい言い訳だって私にだって分かってる。
でも、今はこれしか思いつかない。
「は? 医者の、更に、お兄さん? はぁ、意味分かんねー」
「そう、お兄さん! 買い物のアドバイスが欲しいって言われて……」
「へぇ……アドバイスする為に、手ぇ繋ぐんだ、明莉は」
「ゆ、悠斗だって、すぐ繋いで来るじゃん!」
「そう言うことじゃなくて、明莉はたいして知りもしないヤツと手ぇ繋ぐのかって聞いてんの!」
いや、知ってても繋がないし!
あれは、藤野先生が半ば無理矢理──
とは言えなくて、とにかく一緒にいたのが先生だと知られないように、今は頑張るしか無い。
「あ、あれは、人が多くなってきて、その……はぐれそうだったからやむを得ずそうなっただけで……」
「んじゃ、腰に手回してイチャつくのも?」
「……っ!!」