先生がいてくれるなら①【完】
「えっ、ちょっと、悠斗っ!?」
「明莉はさぁ、ちょっと危機感なさ過ぎるから、心配だんだよ……」
「ちゃんと気をつけてるってば」
「──どこが?」
「し、知らない人にはついて行かない、とか……」
しかしそこまで言って、私は、初めてハイド氏な藤野先生に出会った時にあっさり車に乗ってしまった事を思い出し、次の言葉が出て来なくなってしまう。
「小学生かよ……」
「うっ……。とにかく、ちょっと、離してってば」
私が身をよじると、悠斗はやっと腕を緩めて私を解放してくれた。
「あの変態男とは、ホントに付き合ってないんだな?」
「ないない!!」
「……分かった。ならいい」
──良かった。
一応、納得してくれた……。
「わ、分かってくれて良かった!……じゃ、戻ろっか!」
私がパッと踵を返して教室へと歩き出すと、悠斗が一呼吸遅れて私の後を追うように歩き出し、私はなんとか悠斗の追求を逃れられた事に安堵のため息を密かに漏らしたのだった──。