先生がいてくれるなら①【完】
ただ、一度だけ、廊下ですれ違った事がある。
男友達と楽しそうに話していた。
──彼氏か?
そんな風に考えるには十分なほど、横にいる男が立花の事を見る目は熱っぽかった。
……ムカつく。
「部活を辞めて、男とイチャイチャかよ。……ま、俺の知ったこっちゃねぇか」
誰にも聞こえないように呟いて、俺はその時見た光景とイライラした感情を、闇に葬り去った。
それからほどなくして、テニスコートは違う場所に移される事になり、その一年生の事は頭から消えて行った。