先生がいてくれるなら①【完】
先生のひんやりとした手が触れた部分さえ、熱くなっているのが分かる。
一度気づいてしまえば、もう自分の気持ちに嘘がつけない。
先生と生徒なのに。
暴君と下僕なのに。
私は好きだけど、先生はきっとそうじゃないのに。
いつの間に私は先生のことが好きになってしまったんだろう。
どの瞬間に?
──いくら考えても答えは出ない。
ただひとつ言えるのは、気づいたときにはもう重傷だったって事──。
「──先生、お願い、離して下さい……」
先生に触れられていることに耐えられなくなって、私は震えて掠れる声で懇願した。
先生は、ふ、と溜め息をひとつついて、私の手をゆっくり離す。
私から離してと言ったのに、先生の手が離れていくことが、ひどく寂しい。
それを自覚して、目に涙がにじんだ。
泣きそうなのを先生に悟られないように、私は必死に顔を背ける。