先生がいてくれるなら①【完】
「その人は裏表があって、毒舌で、私を子供扱いしてて。……でもね、すごく優しいの。私のことバカにしたかと思ったら、次の瞬間にはふわっと優しい言葉で包み込んでくれるんだ」
「……え、なにそれ」
美夜ちゃんは私の発言に絶句している。
そりゃそうだよね。
私が美夜ちゃんの立場だったら、そんな風に言われたら絶句するどころか激怒するよ。
私の大切な親友に対してそんな扱いするなんて、ってね。
「……その人、新手の詐欺師かなんかじゃないの?」
美夜ちゃんは眉間に皺を寄せてそう言った。
「ははっ。そうだね」
「明莉、騙されてるんじゃない? お金要求されたりとか、してない!?」
「あはは、ないない。むしろ、お金払おうとしたらあの手この手ではぐらかされて、一円も払わせて貰えなかった」
「なにそれ!? あ、分かった。きっと明莉をまるまると太らせて、食べちゃう算段なんだ!」
「童話か!」
私は漫才師のツッコミみたいに、右手で美夜ちゃんをペシッと叩く真似をした。