先生がいてくれるなら①【完】
「でもさ。朝の顔、ひどかったよ? その人と何かあったって事でしょ?」
「私さ、その人が好きだって、昨日気づいたんだよ。それまで何とも思ってなかったのになぁ」
「んー、でも恋に落ちるときって、そんなもんなんじゃないの?」
「えっ、そうなの? 私、こんなの初めてで……」
「突然恋に落ちる、みたいなのが?」
「じゃなくて。人を好きになるのが、かな」
「え゛っ、まじでぇ~!?」
美夜ちゃんは盛大に驚いて、うっかりお弁当箱を手から滑り落としそうになった。
「ここ、そんなに驚くところかなぁ」
「いや、驚くでしょ! 私たちもう高校生だよ!? なのに、まさかの初恋!?」
「初恋ってわけじゃないよ、中学の時に好きな子はいたから。でも、こんなに切ない気持ちになるのは初めてって言うか。これが恋だって言うなら、あの時は違ったのかな、って思うだけで……」
先生の事を思うと、心がキュッとなる。
多分報われる事の無い想いをこの先もずっと抱えて行くんだと思うと、胸がズキズキと痛んで鼻の奥がツンと痛み、涙が出そうになる。
先生の一挙手一投足に右往左往して喜んだり悲しんだりしてしまう。
「はあぁぁぁ……」
私が大きなため息を吐くと、美夜ちゃんは私の背中を優しくさすってくれた。