先生がいてくれるなら①【完】
その女子生徒を横目で見ながら、職員用玄関で傘を閉じた。
女子生徒はまだ昇降口の前で佇んだままだ。
何をやっているんだろう?
しばらくすると、彼女は周囲を気にするように辺りを見回し──掲げていた傘を、クルッと回して嬉しそうに笑った。
「……っ」
見覚えのある、顔──。
そうだ、アイツだ。
テニス部を去年の二学期でやめた女子生徒──。
俺はその場からしばらく動けず、立ちすくんだままだった。
去年一年生だった彼女は、当然今年度は二年生──。
二学年の副担任──それは運命だったのかも知れない。