先生がいてくれるなら①【完】
それは1学期の中間テスト直前の朝の事だった。
テスト前とあって、部活動の朝練はもちろん無い。
普段は昇降口前で朝練へと向かう美夜ちゃんと別れるけど、この期間中は教室まで一緒に向かう。
そんな時に限って──
「……あ」
私は下駄箱に入れられていた紙切れを、慌てて──でも美夜ちゃんには気付かれないように素早くポケットに仕舞った。
しかしテニスで鍛えられた親友の動体視力は、この一件を見逃してなどくれなかった。
「ねぇ明莉! それってもしかすると、あれ!?」
「えっと。あれって、何かなぁ?」
とりあえず惚けてみせる。
だけどそんな小細工は美夜ちゃんには通用しなかった。
「ね、ちょっとこっち来て!」
美夜ちゃんが私に有無を言わさず、教室とは逆の方向にある特別教室棟のある方へと私を引っ張って行く。
特別教室棟の廊下は誰もおらず、静まりかえっていた。
「美夜ちゃ~ん、何でもないってば~」
「ウソだね。私の目は誤魔化されないよ? ほら、出して出して!」
私はため息をつき、観念してポケットに仕舞った紙を取り出した。