先生がいてくれるなら①【完】
始業式の翌日からクラス担任が出張とかで、副担任である俺がホームルームをやらなきゃならなくなった。
授業の準備はさほどする事はないから良いけど、ホームルームは正直面倒だ。
2年5組の教室の前で、ふぅ、と小さくため息を吐き扉に手を掛けて扉を開ける。
騒がしかった教室が、一瞬で静まりかえった。
担任が来ると思っていたのだろう、「誰?」と言う空気がこちらに押し寄せてくるのが分かった。
「今日は担任の福原先生は出張です」
そう言っておけば俺自身特に名乗る必要も無い。
誰か一人ぐらいは俺が副担任で、二学年の数学を受け持っている事に気づくだろう。
そして、そんな事は俺にはどうでも良かった。
一学期が始まったばかりで連絡事項が多くあり、生徒も理解しているのかしていないのか……。
後で質問に来られるぐらいなら今聞いておくか、と生徒に質問は無いかと投げかけると、巫山戯た返事が返ってきた。
「はーーーい!! 藤野先生は、彼女はいますかー?」
お前らに話すつもり無いよ。
くだらない事ばっかり言ってないで、勉強しろ、勉強。
「──じゃ、好きな人はいますかー?」
こいつら、ホントにバカなの?
学生の本分は勉強だ。
俺の事はほっとけよ。
どうでも良い質問を適当に無視して、そうだ、と思い出す。