先生がいてくれるなら①【完】

「分かりました、清書すればいいんですね」


「引き受けてくれるんだ! ありがとう! ちなみにこれが去年のね」


保管してあった去年の研究発表を見せて貰ったけど。


うん、字が汚いって言うより、内容が既に何を書いてるか難しすぎて分からないよね。


──えっと、呪文かな?



でも、誰のものを見ても、その熱量に私は驚いた。


みんな本当に数学が好きなんだなぁ。


「私から提案があるんですけど、良いですか?」

「うん、ぜひ聞かせて」


「清書しちゃうと、それって全部他人の字で数学を語る事になるじゃないですか。見やすくはなるけど、せっかくの “気持ちの部分” が見えなくなっちゃうから、その下に各自自筆で何かコメントを書くのはどうですか?」


「──なるほど、良いねそれ。どうしてこの公式を選んだかとかを書くんだね?」

「そうですそうです! そしたら数学に興味の無い人も、ちょっと気になったりするかも知れませんし」

「それは思いつかなかったね。さすが文系」



数研のみんなって、ほんとスゴイ。


気持ちが真っ直ぐなんだよね。




──顧問だけがちょっと拗くれ曲がってるけど、ね。


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