先生がいてくれるなら①【完】
「どうしたの?」
「──明莉に近寄ろうとした男どもがすごく多くて、めちゃくちゃ腹立った」
「……えっ、そんなの、いた???」
全く分からない、と唸りながら首をひねっていると、悠斗は私の手を腕からほどいて、私の腰に手を回した。
「ちょっ、悠斗、……手っ!!」
こんな大勢の人の前でこういうことをされると、本当に困ってしまう。
悠斗のファンの子達に、絶対殺される……。
「なぁ、明莉。ビラ配りも終わっちゃったから、これから一緒にあちこち回ろうなっ?」
指定された枚数のビラを配り終えたら自由に回って良いことになっていたので、私は誰かクラスの女子と一緒に回るつもりだったんだけど。
「滝川はいま店番だし、他のやつらと回るんなら、俺でも良くね?」
そうなんだよねー、美夜ちゃんは私とシフトが逆で、いまナースの格好でお店に立ってるんだよぅ。
あぁ、可愛いナース姿の美夜ちゃんとデートしたかったなぁ……。
「……わかった」
しぶしぶ承諾すると、悠斗の顔がぱぁっと明るくなった。
悠斗はほんと、分かりやすい──。