先生がいてくれるなら①【完】
先生は大きなため息をついて椅子から立ち上がり、着ていた白衣を脱ぐ。
お弁当を胸の前で抱きしめて立ったままの私に、その白衣をふわりとかけた。
「それでも着てろ」
先生はそう言って、開放していた窓を閉め、冷房をつける。
普段は着ない白衣。
今日は数研の店番もあるからって、着てるらしい。
脱ぎたての白衣は、先生の温もりと──
「……先生のにおいがする……」
「……あ? いらなかったら返せ」
「嫌です! ごめんなさい、ありがとうございます! あの、ここでお弁当食べても良いですか?」
「……どうぞ」
「ありがとうございます、先生優しいから大好き」
「は? さっさと食って出てけよ」
「はーい」
先生は、口は悪いけど、本当はとても優しいってもう私には分かってる。
まぁ、時々意地悪だけどね。