先生がいてくれるなら①【完】
お弁当の続きを食べようと、次はブロッコリーの味噌マヨ炒めをお箸でつまむと──
先生がまた私の手を掴んで、お箸の先のブロッコリーが先生の口の中に消えてしまった。
茫然と先生を見つめると、先生はちょっと幸せそうにモグモグしている。
「うま。お前、いつもこんな旨いもん食ってんの?」
「──普通、ですけど……」
「普通? お前贅沢だな」
「いえ、あの……普通の味付けなんで」
「……もしかするとお前が作ったやつ?」
「はい。普段の食事も、お母さんが夜勤の時以外はだいたい私が作ります」
「……ふぅん」
先生はそれ以上何も言わず黙ってしまったので、私は再びお弁当の続きを──
「……先生、私のお弁当を狙うの、やめて下さい」
「あ、ばれた?」
ニヤリと片方の口角を上げて笑う先生。
「本気で狙ってたんですか?」
「マサカ、センセイハ ソンナコト シマセン」
……棒読みすぎて、思わず笑いそうになる私。
いかん。
ここで笑ったら、私の負けな気がする。
我慢、我慢……。
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