先生がいてくれるなら①【完】
「立花さんのは無いの?」
「あはは、ありませんよー。私、文系だって言ったじゃないですかぁ」
「来年は何か発表してみたら?」
「まぁ、来年まで所属してたらそうします、あはは」
「んふふ、楽しみにしてますね」
光貴先生は、柔らかく笑った。
──それにしても対照的な兄弟だなぁ。
「あ、そろそろ行かなきゃ。ありがとう、立花さん。助かりました」
光貴先生はペコリと頭を下げた。
「いえ。私も発表を見ていただけて嬉しいです。いや、私のはありませんけど」
「あはは。じゃあ、またね」
「あ、昇降口まで送ります。また絡まれたら帰れなくなっちゃう」
「助かります。でも、立花さんも何か仕事があったんじゃないの?」
「あ、まだ休憩中だから大丈夫です。このあとクラスのコスプレ喫茶の方で——」
そこまで言って、私はコスプレ喫茶の衣装であるゴスロリ服を着ている事を思い出した。
「~~~~~っっっ!!!」
急に真っ赤になった私を見て、光貴先生は優しく微笑む。
「いつ言おうかと思ってたんですけどね。とっても似合ってて可愛いですよ」
「あああああ、ありがとうござい……ま、す……」
死にたい──。
すっかりコスプレ服着てる事を忘れてた。