先生がいてくれるなら①【完】


「でも──」


と光貴先生は続ける。


「その格好を見たら兄さんが怒りそうだから、ほどほどで着替えてあげて下さいね?」


「あわわわわ、せ、せんせいは、もう、知ってます……」

「あれ、そうなんだ。よく許可したね?」

「う……『子供服のファッションショーか?』って言われて、バカにされました……」

「ふふっ、だめだめ、真に受けちゃ。それ、照れ隠しですから」

「と、とてもそんな風には……」


私が真っ赤になったまま俯くと、光貴先生は少しかがんで私の顔をのぞき込んだ。


「大丈夫、すごく可愛いですよ。僕が持って帰りたいぐらい」


「あわわわわ!」


予想もしていなかった光貴先生の甘い言葉に、私は思いっきり慌てふためいた。


「じゃ、立花さん、ありがとう。またね」

「は、はい、光貴先生、ありがとうございました、お気をつけて!」


光貴先生は、甘い余韻を残して去って行った──。



< 250 / 455 >

この作品をシェア

pagetop