先生がいてくれるなら①【完】
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文化祭前日。
文化祭自体にあまり携わる事が無くても、なぜか文化祭にまつわる残業が無くなるわけではないと言うこの不思議……。
他の同僚と共に、俺も当然のごとく残業を強いられていた。
そんな時、胸ポケットの中のスマホがブルブルと振動する。
最早、嫌な予感しかしない。
着信画面を確認して、職員室から廊下へ出た。
弟の光貴からだ。
予感的中。
「──はい」
『あ、兄さん。いまどこ?』
「……学校」
『そっか。何時までかかりそう?』
「さぁ」
『兄さんが帰る時、僕も乗せて帰ってもらえると助かるんだけど』
この人あたりの良い弟は、恐らく電話口の向こうでもニコニコと笑顔を絶やさないのだろう。
俺とは対照的だ。
「無理」
『そんな薄情な事を言うと、後で後悔するよ?』
「──もうしてる」
『そう。じゃあ、よろしくね。学校出る前に連絡して』
光貴はそう言い残して、俺の返事を聞く前に通話を切った。
俺は行くなんて一言も言ってないのに、当然のように迎えに行く事になってるあたりが腹が立つ。
──くそっ、頭痛くなってきた。