先生がいてくれるなら①【完】
あれこれ考えていて、ふと思い出す。
──そう言えば、私、藤野先生のこと全く知らなかったな。
私が一年生の時に赴任して来たらしい藤野先生。
昨年度は私たちとは全く接点が無かった上に先生の地味すぎる見た目がのせいか、全く印象に残っていない。
こんな先生いたんだ、と副担任の紹介の時に思ったぐらい。
明らかにオタク系、髪はボサボサ、変なダサい眼鏡、服装もイマイチ、常に無表情……
そんな見た目なので誰からも気にとめられていないし、むしろ女子からは “人畜無害の数学オタク” なんて言われている。
捕らえ所が無い。
人畜無害。
それが高校二年生の一学期最初の先生の印象だった──。