先生がいてくれるなら①【完】


──なんとか仕事を片付けて職員室を後にし、職員用玄関を出ながら光貴に電話を掛ける。


『あのね、立花さんが来てて』

「……だろうな」

『顔だけ見てすぐ帰るって言うから、引き留めちゃった』


また余計な事を──と思ったが、これは彼なりの気遣いなのだろうと思い直し、光貴に聞こえないように小さくため息をついた。


「今から学校出るから」

『ん。気をつけて来てね。帰りは僕が運転するから』

「お前疲れてんだろ」

『大丈夫だよ、それに “藤野先生” が運転する方が危ないから』


もうため息も出ない──。



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