先生がいてくれるなら①【完】
病院に着くと、事情を知らない様子の立花が弟と立っていた。
明らかに動揺した様子だ。
こっちだって光貴に騙されて激しく動揺してるわ。
そもそもお前が俺に内緒で病院に行くからこんな事になってんだろーが。
口に出して文句を言いたい所だが、疲れすぎてるのかそれとも怒りすぎてるからか……口を開く気分にもなれず俺は無言で運転席を代わる。
「えっと、……」
あたふたとする立花に視線を向ける事無く、俺は助手席へと乗り込んだ。
立花が後部座席に乗り込み、弟の運転で車が動き出す。
何か聞きたそうな立花の問いを弟が察知して立花と弟の車内での会話が始まった。
──ちっ。
イライラしてムカムカする。
疲れすぎか、それともコイツらのせいなのか。
立花の家の前に到着して立花が車から降りると、光貴も運転席から降りた。
弟のこう言う紳士的な所は兄の俺から見てもスゴイと思うけれど……それをする相手が間違ってるんじゃないのか?
立花が玄関扉の向こうに消えるまで手を振る弟に、俺は静かにため息をついた。