先生がいてくれるなら①【完】


「明日と明後日って、文化祭なんだって?」


マンションへの帰り道、光貴が不満そうに話し始める。


「まあな」

「教えてくれたら時間作ったのに」

「そう言うだろうと思ってわざと言わなかった」

「ちょっとだけなら時間とれそうだから、覗きに行くね」

「……いらねーよ」

「立花さんも僕に気を遣って、来て下さいとは言わないんだよねぇ。そう言う所、良いよね、好きだなぁ」



横から見ても満面の笑みと分かる表情で車を運転する弟に、なぜか殺意がふつふつと湧く。


「おい研修医。お前忙しいんだろ? 来なくていいからな」


不機嫌全開でそう言い放ったが、弟は全く意に介さずと言った表情だ。



立花と言い、コイツと言い──どうして俺の周りはこう俺をイライラさせるのが得意なんだ?



あぁ、明日からの文化祭、学校が蒸発でもして消えて無くなれば良いのに──。



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