先生がいてくれるなら①【完】

「ちゃんと食べないと」と言う立花の隣に椅子ごと動して、立花の手を掴んで、今まさに食べようとしていた卵焼きを口に放り込んだ。


…………うまい。


「……っ、何するんですか……っ」


焦って真っ赤になる立花をからかいながら、口の中に残る卵焼きの味の余韻を楽しんだ。


次のおかずをお箸でつまむのを待って──俺は再びそのおかずを口に放り込んだ。


うま。なにこれ、幸せすぎる。


いつもこんな旨いもん食ってんのか、贅沢者め。


しかもコレが普通の味付け、だと?



──いや、ちょっと待て、これって……



「……もしかするとお前が作ったやつ?」

「はい。普段の食事も、お母さんが夜勤の時以外はだいたい私が作ります」


やっぱりか。


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