先生がいてくれるなら①【完】
ちょうど梅雨まっただ中で、今日もついさっきまで雨が降っていた。
今はやんでいるけど、ベンチが濡れているから屋上で昼食をとっている人はいない。
梅雨特有の湿度の高い空気が辺り一面を覆っていて、しっとりとした風が私たちの髪を揺らした。
美夜ちゃんが教室から持ち出した雑巾で、ベンチの雨粒を拭き取る。
こう言う所、彼女は本当に抜かりない。
「さ、どうぞどうぞ。そして是非、話の続きを!」
「ん、ありがとう。えーと、どこで知り合ったかって話だっけね」
「そうそう」
「──その前に、念のため、ほんとに念のためなんだけど、今から話す内容は全部秘密でお願いします」
私は美夜ちゃんに頭を下げる。
「大丈夫。私は口がかたい方だから。請け合います」
「ありがとう。あのね……実はさ、その人、美夜ちゃんも知ってる人だよ」
「へ? そんなイケメンに知り合いはいないよ?」
「……うん、うまく隠してるから。あのね、実はその人、……藤野先生なんだよね」
美夜ちゃんは「えっ」と小さくつぶやいた後、勢いよく立ち上がって「えええぇぇぇーーーっっっ!!!」と大絶叫した。