先生がいてくれるなら①【完】
あいつ、真面目なのか不真面目なのか、よく分からないヤツだな。
ああやって一人でも掃除してる所を見ると真面目そうに見えるし、倉林といちゃついてる時なんかは不真面目に見えるし……。
俺の勝手な主観だけどそんなに真面目そうには見えないから、きっと適当に切り上げて帰るだろう。
俺はひとつ大きく伸びをして、中庭を後にした。
さて、仕事仕事──。
中庭から廊下へ入った所で、二年生の理数科の生徒に呼び止められた。
今日の授業の質問らしい。
丁寧に説明すると理解することが出来たらしく、お礼を言って立ち去っていった。
分からない所をそのままにしない生徒は、今は成績が振るわなくてもそのうちグッと伸びる時が来る。
あの生徒もきっとそうだろう。
彼らの成長の手助けが出来ているなら良いのだが──と日々思う。
準備室へ向かおうとして、ふとさっきの中庭での事を思い出す。
今いる渡り廊下から特別教室棟を見上げると、まだ社会科教室の窓は開いていて、タッセルで止められていないカーテンが風でふわりと踊るように広がっていた。
その向こうに時折見え隠れする生徒。
──どうやらまだ一人で熱心に掃除をしていたらしい。