先生がいてくれるなら①【完】


お兄ちゃんは集中治療室にいて、看護師の制服のままのお母さんが必死にお兄ちゃんの手を握っていた。



私も泣きながらお兄ちゃんの手を握りしめて「お兄ちゃん、お兄ちゃん」と何度も呼びかける。




お兄ちゃんはほとんど意識の無い中、必死に手をギュッと握る私の目を見て、優しく──とても優しく微笑んで、声なく「あかり」と、口を動かした。




そして──







もう、目を開けることは無かった……。





< 298 / 455 >

この作品をシェア

pagetop