先生がいてくれるなら①【完】
* * * * *


朝のHRのチャイムが鳴る直前に、美夜ちゃんが教室に駆け込んで来た。


「明莉(あかり)、今朝はごめんね~! 起きたら待ち合わせの時間で、超ビックリした!」


息を切らせながら、美夜ちゃんが私に謝る。


「ううん、大丈夫。それより、間に合って良かったね」

「走ったよー! 傘あるから、めっちゃ走りづらくて。死ぬかと思ったー!」


美夜ちゃんの席は私の一つ前。



『滝川 美夜(たきがわ みや)』『立花 明莉(たちばな あかり)』──。



出席番号順に座ると、美夜ちゃんと私は前後になる。


去年、一年生の時に座席が前後だった縁で、私たちは親友になった。


今年も同じクラス、前後の席でのスタートだ。



ホームルーム開始のチャイムが鳴り、先生が入って来た。


あれ? 担任じゃない。

えっと、副担任だっけ。


「今日は担任の福原先生は出張です」


副担任の先生はそう言って、諸連絡を始めた。


名前、何だっけこの先生。確か数学の先生だった気がする。



「……と言うことです。質問がある人はいますか」

「はーーーい!! 藤野先生は、彼女はいますかー?」


クラスの男子がふざけて質問をする。


そうか。

藤野。

藤野先生だ。と、男子のおかげで思い出す私。


「……そう言う質問は受け付けていません」

「うっわ、その返事ずるい! じゃ、好きな人はいますかー?」

「その質問も却下ですね」


先生は、見たところ動揺すらしていない。


若い割には見た目が残念すぎるので、男子がからかいたくなるのも分からなくも無いけど。


「質問は無いようなので、これで終わります。あ、このクラスの数学係は、誰?」


数学係!

そう、昨日の始業式の後の委員と係決めで、私は半ば無理矢理、数学係にされたんだった。


はい、と手を上げようとしたその時──


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