先生がいてくれるなら①【完】
そこへちょうど5組の担任──世界史の福原先生が通りかかった。
今から社会科教室へ行くのだろう。
「福原先生」
呼び止めて、俺は渡り廊下の窓から社会科教室を指さした。
「今日の掃除、一人だけしか来てないみたいですよ」
「マジか。あいつら……。えーっと今いるのは……」
「立花みたいです」
「あぁ、なるほど。あいつは真面目なんですよ。掃除もちゃんとやるし、急な頼み事も引き受けてくれるし」
「そうなんですか」
「俺は去年もあいつの担任だったから、そう言う場面はよく見てきましたよ。それにしてもあの教室を一人でって。まぁ立花らしいけど……。ちょっと見てきます、ありがとうございました」
福原先生はそう言って社会科教室へ向かった。
ふぅん。真面目、か。
担任からそう見えるなら、そうなのかも知れないけど。
俺はまだ半分ぐらいしか信じてないから。
──もうちょっとその真面目な部分とやらを、俺にも見せてもらおうじゃないか。