先生がいてくれるなら①【完】

長机の前の椅子に腰掛けると、先生は自分の椅子を私の隣に持って来て座り、眼鏡を長机の上に置いた。



「今日連絡無かったら、明日にでも電話してみようかと思ってたけど。案外元気そうだな」


先生は優しい表情で私の顔を覗き込む。



「──私、毎日泣いてました。人間ってこんなに泣けるんだって思うぐらい。

そしたら……何日目ぐらいかな、だんだん頭が痛くなって来て、クラクラするの。
お母さんに、脱水症状だって怒られました。食べなくても良いから何か飲みなさい、って。

泣きすぎると脱水症状になるし、目も、涙の塩分のせいなのかな、すっごく乾いちゃうんですね。
私、知らなくて。

人間、泣きすぎるとこうなるんだなーって。
それでやっとあまり泣かないようになって。

でもやっぱり悲しいし、まだ信じられないんですけどね……」



ちょっと苦笑いしながらそう言うと、先生は私の頭をわしゃわしゃと撫でる。


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