先生がいてくれるなら①【完】

ひとくち口に含むと、スッキリとしたコーヒーの香りが口に広がって幸せな気分になる。


「冷たくて美味しいです」


もうひとくちコクリと飲み込んで、私は進路について話し始めた。



「先生、私、理系に転向しようと思って。難しいかも知れないけど、頑張りたいんです」

「その考えに至ったプロセスを聞いても良いか?」

「はい」


私は一度姿勢を正し、お兄ちゃんの部屋で考えていた事について、全て話した。


進路の事を今まであまり真剣に考えていなかった事、自分はどうしたいのかをちゃんと考え直した事──。



「──それで、私に何が出来るんだろうって考えたとき、やっぱりお兄ちゃんの事が頭に浮かんで。私でも何かそう言う──病気で苦しんでる人の為に何か出来ることがあると良いなって」


先生は何も言わず、私の目をじっと見て話を聞いている。

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