先生がいてくれるなら①【完】
私は早足でその場から逃げだそうとした。
「立花、待てって!」
どこか聞き覚えのある声だったので、一瞬足が止まる。
だれの声だったか──思い出せない。
と言うよりまず、こんな超イケメンに知り合いはいない。
うーん、誰だっけ……?
なんて考えていたら、その男性の車の後ろに他の車が来て、クラクションを鳴らした。
病院の出口を塞いでいるのだ、そりゃ鳴らされるよね。
「立花、乗って」
男性はそう言って、身体をぐっと助手席側に伸ばし、助手席のドアを開けた。
再び鳴らされるクラクション。
私は後ろの車に小さく会釈をして、思わず助手席に乗り込んでしまった。
……早まった、かなぁ?