先生がいてくれるなら①【完】
鳴らされるクラクションに居たたまれなくなりうっかり車に乗り込んだものの……やはり少し後悔した。
──知らない男の車に乗り込むとか、私、危機感無さすぎる。
後悔したけど、でも、どこか知ってる人のような気がして。
でも思い出せない。
「あの、……」
「なんでこんな遅い時間にあんな所にいた?……具合でも悪かったのか?」
「え? あ、いえ、違います、兄のお見舞いで……」
「……ふーん。で、家、どこ?」
「は? えっと、宮原町です……。あ、あのっ」
「なに?」
声は聞き覚えがある。
でも……この男性に見覚えが無い。
チラリとたまに私に顔を向けるけど、運転してるから、私から見えるのは基本的に横顔だけ。
だけど、横顔だけでも、この男性がとても端正な顔立ちをしている事は分かった。