先生がいてくれるなら①【完】
髪の毛を直す気力も無くぼんやり座っていると、ユキさんが再びやって来て「こら孝哉! 女の子の髪の毛グチャグチャにしちゃダメでしょ!?」と言ってスパーンと頭を叩いた。
「痛っ。暴力反対」
「あんたが明莉ちゃんをいじめるからでしょ? 好きな子には優しくしなさいってお母さんあれほど……」
「こんな暴力的な母親を持った覚え無いんだけど?」
「突っ込む所、そこかい! もっと他にあったろう!?」
「……」
「そうか、否定しないんだね、そりゃ良かった」
「否定っつーか、有りもしない事言うから、スルーしただけ」
ユキさん、それに関しては私も先生に同意です。
だから私も思わずスルーしました、『好きな子』だなんて……。
ユキさんが私の髪をブラシで丁寧に梳いてくれて、鳥の巣みたいだった私の頭は無事に元に戻った。
結局、ユキさんには『先生が付き合ってきた百戦錬磨の女たち』の話を聞く事は出来なかった。
ユキさんも言うつもりは無かったのかも知れないけど。