先生がいてくれるなら①【完】
大急ぎで仕事を片付けて、一旦自分のマンションへ戻った。
さっとシャワーを浴び、着替えて再び自宅を後にする。
立花の最終帰宅時間を確認し、今からなら少し遠出をしても大丈夫そうなので俺は久々に、ある場所へと車を走らせた。
大学時代、夏と冬の休暇期間になると必ず行っていた、あの場所──。
就職して以来、しばらく行く事が出来なかった。
恩義のある人に対して不義理をしていると言う事はもちろんよく分かっているつもりだ。
それでもどうしても足を向ける事が出来なかったのは、単に忙しかっただけではないと言う事も分かっている。
世話になったあの二人には、俺の表情や言動一つで全てを見抜かれてしまうから──。