先生がいてくれるなら①【完】
「えっ……? 藤野先生!?」
「ははは! やっと分かった?」
信号が青に変わると、先生は眼鏡を外して前髪をグッと掻き上げ、車をなめらかに発進させた。
「あのっ、普段と、違いすぎます……っ!」
普段の学校での藤野先生は、ボサボサの髪にダサい眼鏡、ダラッとしたイケてない服装、加えて無表情──お世辞にもカッコイイとは言えない風貌だ。
なのに、今は……。
「家、どっち?」
驚きすぎて何も言えないうちに、家の近くまで来ていたらしい。
「あ、もうここで大丈夫です。あの、ありがとうございましたっ」
「ほんとお前、バカなの?こんな所で降ろすわけないだろ。家、どっち」
く、口悪っ!!
学校ではあんなに、なんて言うか……弱そうなのに!!!
「……二つ先の角を右に曲がった所です」
「あのね、女子高生が制服のままでこんな時間に一人で歩くとか、危なすぎだから」
「……うっ、すみません」
分かればよろしい、と頷いて、藤野先生は交差点を右折する。