先生がいてくれるなら①【完】

放っておくと、そのままどこかへ行ってしまいそうな危うさに、俺は思わず立花の手を取った。


もちろん、もう少しだけ、と深い所まで行こうとする立花が危なっかしかった事もある。


だけど、それだけじゃなかった、と言うのが本音だ。



──触れたい。


お前に、ずっと触れていたい……。


──どこにも行かないで欲しい。


この手に閉じ込めておかなければ、どこかに行ってしまいそうだから……。



立花の手を握ると、心がじわっと温かくなるのを感じた。


手を繋ぐだけでこんなにも自分の心が満たされるなんて、思ってもみなかった。


自分自身でもどうしようもなくなって。


手を握るだけで、こんなにも感情が揺さぶられる。


そんな感情、今まで知らなかった……。

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